メスバウアー効果
1957年にルドルフ・メスバウアーによって発見された物理現象で、
固体の状態の原子によるガンマ線の共鳴吸収現象の事。
ちなみに、彼は若くしてノーベル物理学賞を受賞。
おかげですっかり研究をしなくなってしまったと言う有名な話すらある位
知る人ぞ知るって言う御方らしい。
ノーベル賞を受賞すると講演だけで食べていけるらしい。
X線が気体分子によって共鳴吸収、放射されることは、すでに知られていた。
原子核内のエネルギー準位の遷移によって放射されるγ線についても
同様な現象が予想されていたが気体によるガンマ線の共鳴吸収は、
反跳によってエネルギーが失われることによって観測されなかった。
1957年にメスバウアーが
固体のインジウムにおいてγ線の共鳴吸収を観測した。
反跳によって失われるエネルギーはE
Rは
E
R=E
2/2mc
2
ここで Eはγ線のエネルギー、
m は放射または吸収を行う物体の質量、
c は光速度。
気体の場合、吸収、放射を行うのは原子であり、質量は非常に小さい。
その結果気体によるγ線の共鳴は起りにくい。
X線の場合、光子のエネルギーはγ線のエネルギーに比べてずっと小さく、
失われるエネルギーも小さいので無視できる。
固体ではフォノンのエネルギーが反跳エネルギーよりも大きいので、
γ線を共鳴吸収できる。
メスバウアー効果はメスバウアー分光法として、
固体の結合状態を調べるのに利用される。
ただ、この分光法は以下の理由で非常にマイナーなものとなっている。
・γ線源が限られすぎている
・Fe、Sn、Enの3つしかとった試しがない。
(ただし、これしか取れないので
他の原子の影響が出ないと言うことを考えれば利点とも言える。
事実、発見当初は鉄鋼業全盛期だった為、
鉄の状態を知る上で大いに活躍した。)
・応用例が少ない
(鉄では大活躍だったこの分光法も、いかんせん発展がなかった。)
更にこの分光法は透過したγ線を見るので
XRDの反射スペクトルの様に線源や、試料の回転で
多角的にとると言った方法が取れない。
そこで、Doppler effect(ドップラー効果)を利用し、
線源の位置を移動する事で
γ線の波長を擬似的に変化させて測定すると言った手法を取る。
XRDの様に表面の結晶構造だけではなく、
内部の原子の状態(酸化状態、価数、結合状態)、
スピンの方向までわかる。
まさに、鉄の解析には無敵の手法である。
■関連サイト
・
メスバウアー分光研究会
・
音と光のドップラー効果に関する文章
・
数式が苦手な方のためのドップラー効果